イカリソウ

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バイカイカリソウの葉について

2006.04.25 Tuesday | 分類

玉姫
画像は「玉姫」という銘の、バイカイカリソウ系のイカリソウです。

この花の画像をご覧になって、距がないことから「バイカイカリソウ」そのものと思われる方も多いことと思います。
ところが、この「玉姫」は、確かにバイカイカリソウの血筋ではあるのですが、バイカイカリソウそのものではありません。

バイカイカリソウ Epimedium difhyllum は非常に特徴あるイカリソウの仲間です。
その特徴としては、
1:花色に白しかないこと。
2:花に距がないこと。
3:葉が1〜2回2出すること。
4:葉に鋸歯がないこと。
などがあります。

ところで、バイカイカリソウの自生の分布域には、トキワイカリソウ Epimedium sempervirens や、イカリソウ Epimedium grandiflorum var.thunbergianum の分布域と重なる地域があります。中国地方や四国・九州などです。
もともとイカリソウ属の植物は種間雑種ができやすいので、これらの地域のイカリソウ類は自然交雑しています。
交雑したものの中には、距が長く花色の濃い、イカリソウ(狭義)に姿の近いものもあれば、距が短い、花だけ見ればバイカイカリソウとしか思えないものもあります。
上の「玉姫」もそうしたイカリソウ(広義)の品種です。
そういう意味で、「バイカイカリソウ系」という言葉をこのブログでは使わせていただいています。

バイカイカリソウと、「バイカイカリソウ系」のイカリソウとは厳然と区別されるべきですが、山野草の流通やウェブ上では大変混乱しているようです。
ウェブサイトによっては、花がピンク色のものや、短い距のあるものまでを「バイカイカリソウ」と呼んで、あまつさえ学名を表記してあるところもあります。

この記事では、そうした混乱を整理するために、バイカイカリソウの葉の出かたを画像を使ってご紹介したいと思います。



◇「2出(にしゅつ)」について。

イカリソウの葉というものは複葉になることが多いのですが、バイカイカリソウを除くイカリソウ属の種はみな、奇数の複葉を持ちます。

ところが、バイカイカリソウは2枚か4枚の小葉を持つ複葉を持ちます。
これはとても珍しい、面白い特徴です。

下に画像をあげてみます。
1回2出

根元から出てきた葉柄が二又に分かれ、その先に小葉が一枚ずつついています。
この「二又に分かれる」ことを2出と呼びます。

1回2出
別の個体の葉の写真です。この個体は斑入りのバイカイカリソウですが、これも葉が「2出」しています。

◇「1回(2回)2出」について。

2回2出
この画像では、根元からきた茎が二又に別れ、その先がまた二又に分かれて、それぞれに小葉が一枚ずつつき、合計4枚の小葉から一枚の葉が成り立っています。
この場合は「2出」して「2出」しているので、2回2出していると言います。

これに対し、上の場合は「1回2出」と呼ぶわけです。

バイカイカリソウは上三枚の画像のような葉の出かたのみです。

◇「2出して3出」について。

次に、以下のような葉の画像を見てください。
2出して3出
よくご覧になるとお気づきだと思いますが、この葉は最初根元から出てきて二又に分かれていますが、その後三又に分かれて小葉が全部で6枚ついています。
最初の二又にはバイカイカリソウの形質が見てとれますが、次の三又はバイカイカリソウ以外の形質です。
この葉は交雑種(バイカイカリソウ系)なのです。

多くのバイカイカリソウ系のイカリソウはこういう葉の出かたをします。
中には1〜2回2出の葉を持つものもありますが、葉をいくつか見てみると必ずこうした葉が混ざっているものです。
この葉の出かたを2出して3出するといいます。



バイカイカリソウと、交雑種を区別するときに、花の形や色は花期にしか見られませんし、葉の鋸歯については交雑種でも鋸歯のほとんどないものもあるので、この葉の出かたを見極めることがとても重要になります。

ちなみに、比較のために狭義のイカリソウの葉の写真を以下にあげておきます。

イカリソウの葉
新葉の様子です。
「2回3出(三又に分かれて、また三又に分かれ、合計9枚の小葉がつく)」です。

イカリソウの葉
葉には鋸歯が目立ちます。
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ソハヤキイカリソウ

2005.05.01 Sunday | 分類

ソハヤキ
(05年04月28日、大和葛城山で撮影)

ソハヤキイカリソウと呼ばれるイカリソウは奈良と大阪と和歌山にまたがる金剛葛城山系に自生しています。
分類上は、キバナイカリソウ Epimedium grandiflorum ssp.koreanum に含まれるものとする説が有力なのだそうです。
ただ、一般に「キバナイカリソウ」と呼ばれているものと、このソハヤキイカリソウとは、陸続きの本州にもかかわらず分布域が連続していません。

以下に、ソハヤキイカリソウの分布と、キバナイカリソウの南限域とを図で示します。
ソハヤキ地図

キバナイカリソウは北海道から本州中部にかけて、狭義のイカリソウよりも寒冷な山地などに分布の見られる種ですが、おそらく古い時代に各地に分布したため、その後の気候条件等の変化によって分布域が分散し、ソハヤキイカリソウのような隔離分布ができたものと思われるそうです。

scool icon clubさんより白地図イメージをお借りしました。
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日本産イカリソウ属の分類の一説(2)

2005.02.01 Tuesday | 分類

「The Genus Epimedium and Other Herbaceous Berberidaceae」
William T. Stearn, Julian M. H. Shaw, Peter S. Green, Brian Mathew著 
Timber Prより


【日本産イカリソウ属の検索表】

(1)葉は2小葉または2回3出葉。花は白くて小さく花弁は平らで、距がないかまたは10-
  15mmの距がある。
 (2)花弁には距がない。
  (3)葉は2小葉または2回2出、上面は無毛であり全縁で丸みがある。
・・・バイカイカリソウEpimedium difhyllum subsp.diphyllum

  (3)葉は2小葉または3小葉。小葉は鈍頭。葉の上面に細毛が広がる。鋭頭で葉縁に
    まばらな鋸歯がある。
・・・サイコクイカリソウEpimedium difhyllum subsp.kitamuranum

 (2)花弁は短い距を持つ。
  (3)葉は夏緑で秋に枯れ、洋紙質。ふつう3小葉を2出する。
・・・ヒメイカリソウEpimedium trifoliatobinatum subsp.trifoliatobinatum

  (3)葉は常緑で革質。2小葉を2出ときどき3出。
・・・シオミイカリソウEpimedium trifoliatobinatum subsp.maritimum

(1)小葉は9枚かそれ以上である。花弁の長さは12-30mmで長い距を持ち、距は先細りで
  錐状である。
 (2)葉は夏緑で葉の下面の毛は立ち上がる。地下茎は長く伸びない。
  (3)花は白色で、内がく片がやや薄紫色を帯び、花弁は白い。
・・・ヤチマタイカリソウEpimedium grandiflorum forma grandiflorum

  (3)花は淡い黄色である。
・・・Epimedium grandiflorum forma flavescens

  (3)花は花弁・内がく片とも淡紫色のことが多いが濃赤紫色から白色までの幅が見ら
    れる。
・・・イカリソウEpimedium grandiflorum forma violaceum

(2)葉は常緑で、地下茎は細長く伸びる。
  (3)花は白色。距は多くは長さ18mm以下。
・・・トキワイカリソウEpimedium sempervirens var.sempervirens)

  (3)花は基本的に紅紫色。距は多くは長さ18mm以上。
・・・オオイカリソウEpimedium sempervirens var.rugosum)

  
※…従来「キバナイカリソウ」「クモイイカリソウ」「ソハヤキイカリソウ」と呼ばれているもの。

【この説の特徴】

「キバナイカリソウ」(「クモイイカリソウ」「ソハヤキイカリソウ」)をE.koreanumではなく、E.grandiflorumの1品種であるとしています。
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日本産イカリソウ属の分類の一説(1)

2005.01.31 Monday | 分類

「日本のイカリソウ 起源と種分化」鈴木和雄著 八坂書房より

【日本産イカリソウ属の検索表】

(1)花弁に距がない。
 (2)葉は1-2回2出。小葉は鈍頭。葉縁の鋸歯はほとんどない。葉の上面は無毛。
・・・バイカイカリソウEpimedium difhyllum

 (2)葉は2出し、3出する。小葉は鈍頭。葉の上面に短い立毛がある。
・・・サイコクイカリソウEpimedium difhyllum ssp.kitamuranum

(1)花弁に距がある。
 (2)距は長さ10-15mm。葉は2出し、3出する。小葉は鋭頭。
  (3)葉は常緑でやや革質。海岸近くに生育。
・・・シオミイカリソウEpimedium trifoliatobinatum ssp.maritimum

  (3)葉は多くは夏緑で洋紙質。四国の蛇紋岩地に生育。
・・・ヒメイカリソウEpimedium trifoliatobinatum

 (2)距は長さ15-25mm以上。葉は2-3回3出。小葉は急鋭尖頭。
  (3)葉は常緑で、裏面の毛はあれば屈毛。
   (4)花は基本的に白色。距は多くは長さ18mm以下。福井県以北、新潟県までの日
      本海側に分布。
・・・トキワイカリソウEpimedium sempervirens)

   (4)花は基本的に紅紫色。距は多くは長さ18mm以上。福井県以西、島根県までの
      日本海側に分布。
・・・オオイカリソウEpimedium sempervirens var.rugosum)

  (3)葉は夏緑で、裏面の毛はあれば直立毛。
   (4)花は淡黄色。
・・・キバナイカリソウEpimedium grandiflorum ssp.koreanum

   (4)花は白〜紅紫色。
    (5)花は白色。葉は多くは3回3出以上。小葉は小さい。葉の裏面は無毛のことが
       多い。四国、九州に分布。
・・・ヤチマタイカリソウEpimedium grandiflorum

    (5)花は紅紫色、まれに白色。葉は多くは2回3出。小葉は大きい。葉の裏面は有
       毛のことが多い、近畿地方以東北に分布。
・・・イカリソウEpimedium grandiflorum var.thunbergianum


【この説の特徴】

(1)「ヒゴイカリソウ」は「ヤチマタイカリソウ」に含まれるとしています。
(2)「ソハヤキイカリソウ」「クモイイカリソウ」は「キバナイカリソウ」に含まれるとしています。
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