
画像は「玉姫」という銘の、
バイカイカリソウ系のイカリソウです。
この花の画像をご覧になって、距がないことから「バイカイカリソウ」そのものと思われる方も多いことと思います。
ところが、この「玉姫」は、確かにバイカイカリソウの血筋ではあるのですが、バイカイカリソウそのものではありません。
バイカイカリソウ
Epimedium difhyllum は非常に特徴あるイカリソウの仲間です。
その特徴としては、
1:花色に白しかないこと。
2:花に距がないこと。
3:葉が1〜2回2出すること。
4:葉に鋸歯がないこと。
などがあります。
ところで、バイカイカリソウの自生の分布域には、トキワイカリソウ
Epimedium sempervirens や、イカリソウ
Epimedium grandiflorum var.
thunbergianum の分布域と重なる地域があります。中国地方や四国・九州などです。
もともとイカリソウ属の植物は種間雑種ができやすいので、これらの地域のイカリソウ類は自然交雑しています。
交雑したものの中には、距が長く花色の濃い、イカリソウ(狭義)に姿の近いものもあれば、距が短い、花だけ見ればバイカイカリソウとしか思えないものもあります。
上の「玉姫」もそうしたイカリソウ(広義)の品種です。
そういう意味で、「バイカイカリソウ系」という言葉をこのブログでは使わせていただいています。
バイカイカリソウと、「バイカイカリソウ系」のイカリソウとは厳然と区別されるべきですが、山野草の流通やウェブ上では大変混乱しているようです。
ウェブサイトによっては、花がピンク色のものや、短い距のあるものまでを「バイカイカリソウ」と呼んで、あまつさえ学名を表記してあるところもあります。
この記事では、そうした混乱を整理するために、バイカイカリソウの葉の出かたを画像を使ってご紹介したいと思います。
◇「2出(にしゅつ)」について。
イカリソウの葉というものは複葉になることが多いのですが、バイカイカリソウを除くイカリソウ属の種はみな、奇数の複葉を持ちます。
ところが、バイカイカリソウは2枚か4枚の小葉を持つ複葉を持ちます。
これはとても珍しい、面白い特徴です。
下に画像をあげてみます。
根元から出てきた葉柄が二又に分かれ、その先に小葉が一枚ずつついています。
この「二又に分かれる」ことを
2出と呼びます。

別の個体の葉の写真です。この個体は斑入りのバイカイカリソウですが、これも葉が「2出」しています。
◇「1回(2回)2出」について。

この画像では、根元からきた茎が二又に別れ、その先がまた二又に分かれて、それぞれに小葉が一枚ずつつき、合計4枚の小葉から一枚の葉が成り立っています。
この場合は「2出」して「2出」しているので、
2回2出していると言います。
これに対し、上の場合は「1回2出」と呼ぶわけです。
バイカイカリソウは上三枚の画像のような葉の出かたのみです。
◇「2出して3出」について。
次に、以下のような葉の画像を見てください。

よくご覧になるとお気づきだと思いますが、この葉は最初根元から出てきて二又に分かれていますが、その後三又に分かれて小葉が全部で6枚ついています。
最初の二又にはバイカイカリソウの形質が見てとれますが、次の三又はバイカイカリソウ以外の形質です。
この葉は交雑種(バイカイカリソウ系)なのです。
多くのバイカイカリソウ系のイカリソウはこういう葉の出かたをします。
中には1〜2回2出の葉を持つものもありますが、葉をいくつか見てみると必ずこうした葉が混ざっているものです。
この葉の出かたを
2出して3出するといいます。
バイカイカリソウと、交雑種を区別するときに、花の形や色は花期にしか見られませんし、葉の鋸歯については交雑種でも鋸歯のほとんどないものもあるので、この葉の出かたを見極めることがとても重要になります。
ちなみに、比較のために狭義のイカリソウの葉の写真を以下にあげておきます。

新葉の様子です。
「2回3出(三又に分かれて、また三又に分かれ、合計9枚の小葉がつく)」です。

葉には鋸歯が目立ちます。