雪割草を愛好していらっしゃる方たちは、どちらにお住まいでも今頃、葉っぱ育てに心を砕いていらっしゃるでしょう。
特に、徒長が命取りになりかねない太平洋側の暖地で雪割草を栽培していらっしゃる方は、葉っぱを如何にかたくしっかりと作るか、日々工夫していらっしゃると思います。
私も本当に制限の多い環境で、育苗トレーをあちらこちらに移動させながら葉育てをしています。
雪割草の咲き始めが遅かったので思い切って早めに花を切ったおかげか、葉っぱは今のところすくすくと育っています。
展開してきた新葉は本当に美しくて、座り込んで眺めてしまうほど見飽きません。
雪割草には本当にいろいろな葉っぱがあります。

「紅すだれ」F1の葉。花も凄みがあるように、葉にもやはり独特の色合いがあります。

黄花の葉っぱ。黄花は、富山県産のミスミソウ
H.nobilis var.
japonicaであるものが多いと言いますが、「三角草」の名のごとく葉先がとがっていて、葉っぱがどこか黄色みがかっています。

葉が濃褐色のものは花の色も濃いものが多いようですが、この株の花の色は白にニュアンス程度紫のさすお花です。
雪割草には、無地の葉もあれば、模様葉も多いです。

葉模様だけでも楽しめるような株です。けれど、雪割草には葉模様は普通なので特に珍しいというわけではありません。

葉色がグッと淡く、銀葉じみているところへ、葉の付け根に紅が差してきれいなものです。

青軸の株の葉はみな無地で、ベタな緑色です。
ところで、「雪割草」というお花たちについてちょっとややこしいことを書いておきます。
雪割草愛好家たちは、自分たちの栽培している大好きな植物について、必ず漢字で「雪割草」と表記していると思います。
植物の呼び名にはいろいろあって、まずラテン語で表記される万国共通の「学名」があり、それから日本で用いられ図鑑に載せるような名前の「標準和名」というものがあります。
それから、その植物が日本に古くから自生しているものの場合には「地方名」があります。
それから、園芸植物としてあるいは切花などで流通している場合、「流通名」があります。
また、特に一般園芸とは分けて、古典園芸に属するような植物には、その趣味家の間で呼び合う名前のある場合もあります。
雪割草を「雪割草」と書くのは、上に挙げた呼び名の内の最後に属する考え方だと言えます。「雪割草」と漢字で書くのは、実は、サクラソウ科の別の植物の標準和名に「ユキワリソウ」というものがあって紛らわしいためです。
「雪割草」は、分類学上はキンポウゲ科ミスミソウ(Hepatica)属の2変種3品種を総称する呼び名です。
標準和名と学名を下に挙げます。
1
・ミスミソウ
H.nobilis var.
japonica f.
japonica
・オオミスミソウ
H.nobilis var.
japonica f.
magna
・スハマソウ
H.nobilis var.
japonica f.
variegata
2
ケスハマソウ
H.nobilis var.
pubescens
この内、「雪割草」として栽培されているものの多くはオオミスミソウですが、他の品種、変種にもよい花があり、選ばれて栽培されています。
ホームセンターや園芸店などでは、「雪割草」という呼称で売られている事が多いですが、まれに平仮名片仮名表記のものや、標準和名から「ミスミソウ」などの名前で売られていることもあります。
突然こんなことややこしいことを書き始めたのは、上に挙げた2変種3品種のうちの特に「ケスハマソウ」のことにふれたかったからなのですが、もうひとつ理由があります。
先だって、雪割草愛好家もたびたび書き込みをするあるホームページの掲示板で、雪割草のある花のことを「オオミスミソウ園芸種」とわざわざ呼んで写真を投稿した人がいるのですが、その人の貼っていた写真は、いわゆる「六甲タイプ」のめしべの赤いケスハマソウでした。
その人は、山野草栽培や古典園芸などを元からあまり快く思っていなかった人で、同時に、園芸界の植物の呼称の混乱を憂いてもいらっしゃるのだと思います。だから、一般の方には本質の分かりづらい「雪割草」という呼称を敢えて使わないようにして、そのことで間違った書き込みしてしまったのだと思います。
主張を持つのはその人それぞれでいいと思います。ただ、これだけ裾野の(私などは裾野のその果てです)拡がった雪割草の愛好家が、自分たちの大好きな花を「雪割草」だと統一して呼び合っているのに、傍からそれを否定するような物言いをするのはどうかと思いました。
もし発言するなら、もっと雪割草のことを勉強してからにしてほしい。せめて、ケスハマソウとオオミスミソウの違いくらい知って欲しい、と思いました。六甲タイプならばめしべを見れば一目瞭然なのですから。
名前はいつも、植物を栽培する人たちを悩ませます。
でも私は、ひとつの植物にいろいろな呼び名があるということをとても面白く楽しく思います。だから、学名であっても、標準和名であっても、それから「雪割草」のようなマニアックな名前も、それから自生地の人が歴史の中で大事にしてきた「地桜」というような名前も尊びたいと思います。
愛好家はそういったことを踏まえたうえで、知らない人に聞かれたら丁寧に説明していけばいいのではないでしょうか。
さて、カタい話はこれくらいにして。
次に挙げるのは、雪割草の中でも先ほど名前を出した「ケスハマソウ」に属する品種である「天神梅」という株です。

クローズアップです。
模様葉で、細身の葉ですが、これまで挙げた写真の葉とはずいぶん質感が違います。

これは別のケスハマソウに属する雪割草で無銘のもの。

これも無銘のケスハマソウです。
ケスハマソウは、日本のミスミソウ属の4つの仲間の内でもひとつだけ別変種の扱いです。別の変種になるということはそれだけ他のものと異なる特徴がある、ということですが、そのひとつに、「花のめしべの赤いものがある」というものがあります。
花の咲いていない今の時期にはめしべの特徴はわかりませんが、新葉を見てみると、これもまた特徴的です。
ケスハマソウの新葉は葉の質が薄いです。また、葉に艶のようなものが一切なくマットな質感です。ペラペラとして紙でできているような印象です。
再度、普通の「雪割草」の葉の写真を挙げてみます。

これはかなり艶のはなはだしいものですが、上の3つと比べると全くベツモノに見えると思います。
さて、ここで問題です。
以下のリンク先は、少し大きめの写真(240kb)で、雪割草の3年生苗が9株写っています。
ケスハマソウの株はどれでしょう?
写真