7.魚のように 中脇初枝 〇
「きみはいい子」「わたしをみつけて」の中脇初枝のデビュー作だということで、bookoffで見つけて購入。
既読作と同じような手触りの小説を期待していたら大違い。まじめな純文学の文芸誌を間違って手に取ってしまったような・・・
自分の中の文学を目を凝らして見つめて水底から言葉を丹念に掬い上げて綴ったような印象。驚いたのはこれは著者が高校生の時の作品なのだそうで、やっぱり才能というものは人を選んで備わっているもので努力で埋められないものが厳然としてあるのだなぁ、と。
既読作が、著者が誰かの人生を照らすために書いたもの(と私は勝手に思っているのだけれど)だとすると、この本の2編は著者が自分を生かすために書いたものなのだ。そうして一生、自分のためだけに文章を綴る人もいるのだろうけれど、この作者が違う目的を持ってくれたことに、私は心から感謝する。

8.幼な子われらに生まれ 重松清 △
何冊かこの著者の本は読んだが、「イイ話」の予定調和なスタイルが「もういっか」となってしまってつい手が伸びない。
新聞で、キネマ旬報のベストテンにこの作品の映画化が入っているのを見て、ググってみたら映画が面白そうだったので、原作をとりあえず読んでみようと。図書館になかったのでこれもbookoffで。

9.世界の果ての子どもたち 中脇初枝 ◎
三重丸つけたいくらい。
戦中の満州の開拓村で、ただ嵐の一夜だけを一緒に過ごしおにぎりを分け合った、ともに国民学校一年生の、珠子と美子(ミジャ)と茉莉の三人の少女が、引き揚げ、差別、被災とそれぞれに辛苦の人生を送り、その一夜の思い出が決め手となって再会する。
たくさんの人に地獄を這いまわらせ、命を奪った戦争を経験した、隣同士の3つの国に生きるものが、幼子が手に握ったキャラメルを力づくで奪うような生き様を選ぶのか、たった一つのおにぎりを他者により多く分け与える幸せを選ぶのか、作者は私たちに真剣に向き合って本当に大切なことを問い直している。
図書館で借りた本だがこれは持つべき本と思い、Amazonで中古で購入した。また読み直そう(夫にも勧めて昨日一気読みしていた)。

10.きのうの神さま 西川美和 〇
「永い言い訳」がとてもよかったので他の本も、と思い借りてきた。
短編集。
映画の「ディア・ドクター」は気になっていながら見ていないのだが、この短編集は「ディア・ドクター」のための取材で余ってしまったネタを惜しんで書かれたもののようだ。
きめ細かい人物描写。好ましい。

11.恋のゴンドラ 東野圭吾 △
新作があると、つい図書館で予約してしまって、やっと順番が来て読むのだけれど、読み物として面白いのは面白いのだけれど、後に何にも残らない。きっと半年もすると内容も全部忘れちゃってると思う・・・